第75話 その直感が、答えなのよ。
私は、上から崩れてきた雪をひとつかみすると、がぶりと口の中に入れた。
口の中に広がる冷たさに、私は気を持ち直して、
もう少し!
もう少し!
と、橇を押し上げていく。
もはや、アーセルや先頭の犬たちにエールを送るどころではなく、
「頑張れ! 私!」
「頑張れ! 私!」
と、自分に言い聞かせることになっていた。
先頭のリーダー犬たちが、ようやくへばりつくように壁を登り切っていった。
「よし、上がれ!」
「上がれ!」
次の列、次の列とよじ登って、最後尾のアーセルも登り切った。
しかし、ここで犬たちが登り切ったことに満足して足を止めてしまうと、下で橇を押し上げる私だけでは最後のひと上げができない。
私は下から上の犬たちに、大きな声で叫んだ。
「ハイク!」まだ止まるな!
「ハイク!」まだ引け! 引け!
犬たちもまた、この情況をちゃんと理解しているようで、踏ん張り続けていた。
下で見ていたトーニャも、両手をつきながら這うように上がってきて、私と一緒に橇を支えてくれた。
最後の瞬間は、犬たちが一丸となって引っ張り上げてくれた。