周囲に草がなく、砂が露出した裸地だ。そこに幼虫が密集している。

 面積としては、大したことない。直径1メートルくらいのほぼ円形で、たぶんたたみ一畳分くらいだろう。遠巻きには、緑色をした池が砂漠にできたように見えた。

「自分、こういうの、見たことないッスよ! 読んだこともないッスよ!」と前野さん。

 マーチングというのは、行進であり、草も何もないところにただ密集して動かずにいるというのは、あまり報告されない珍しい行動なのだという。

(写真クリックで拡大)

 近づくと、マーチングを再開して、アリみたいな隊列で逃げ始める。ぼくたちは、撮影したり観察したり夢中になっているわけだが、その間、我々の優秀なスタッフたちは、モーリタニア流のお茶を入れてくれて、例えば、前野さんが捕虫網でバッタを捕まえようとしても、「飲め」とばかりに振る舞ってくれる。実はこの日、「昼飯抜き」でぶっ続けての観察になってしまったのだが、甘いお茶だけは常に忘れないというのが心意気! な人たちなのだった。

「飲みなよ」(写真クリックで拡大)

 とにかく、ぼくは夢中であった。最初は静かだったバッタたちも、周囲に出現した人々のせいで興奮したのか逃げ惑い、ジャンプし、積み重なり、非常に騒然とした状況になった。こういうものも、バッタの逃避行動として興味深いものらしく、前野さんは観察し、ぼくはシャッターを切った。

「こういうジャンプ、はじめて見るッス。敵が近づいてきた時の反応というか、いったいこれが何なのか。こういうふうな群れの行動、もう3年、4年待ってください。そうしたら、学術的に説明します!」という前野さんと、「いや、それ頑張って下さい。待ってます!」というぼくと、双方夢中になってしまい、昼飯抜きになってしまったのが真相である。

 本当にすみません。反省しています、スタッフの皆さん。皆さんが「ラマダンによる、絶食なれ」(前野さんの表現)している人たちだったからこそ、なんとかなりました。まことに、ありがとうございます。

 そんなこんなで、先発隊のキャンプに到着したのは夕方だった。

夢中になって撮影する前野さんの靴にも。(写真クリックで拡大)

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