第3回 バッタ博士、サバクトビバッタと出会う

「まず、サバクトビバッタの孤独相と群生相のメス成虫では、産む卵の大きさと数が違うことがすでに知られていました。孤独相は小さい卵をたくさん産み、群生相は数が少ないけれど、大きい卵を産む。で、その大きさの異なる卵からは、色の違う孵化幼虫が出てきます。孤独相の小さな卵からは緑色の、群生相の大きな卵からは黒い色の幼虫が。そこでちょっとした実験を思いつきまして──」

卵黄除去(A)と無処理(B)の比較。処理後1日目、6日目と孵化時の状態を示した。群生相が産んだ大きな卵のみを使用。産卵後5日目に針で穴をあけてから卵黄を摘出し、人為的に小型化すると、孤独相の幼虫が孵化してきた。なお6日目の矢印は「眼点」。(画像出典:『孤独なバッタが群れるとき』口絵)(画像クリックで拡大)

 この話を伺った時点で、ぼくはすでに前野さんから、野生の初齢幼虫、それも群生相と孤独相の両方を見せてもらっていた。本当に体色だけで見るならまったく違うバッタかと思うほどの違いだった。その背景には、母親の体内で卵ができる時にすでに「卵の大きさ」として決定されている要因があるのだという。

「群生相のメス成虫が産んだ大きい卵を無理やり小さくしたらどうなるかと、実際にやってみたんです。卵に穴を開けて卵黄を吸い出して小さくしたら、群生相の黒ではなく、孤独相の緑色の幼虫が孵化してきました。これ、生物学的にもサバクトビバッタの研究の歴史の中でも結構面白い発見だと思ってます。でも、昆虫の卵に穴あけたりするのは、やっちゃいけないっていうか、もう卵を殺すために穴あけるようなものだと思われていて、若さゆえのチャレンジ精神というか、ノリでやってみたらうまくいった、と」

 そして、もうひとつ。これは、先の研究と、今のモーリタニアでの研究を直接つなげる内容でもある。