第2回 サバクトビバッタとは何者か

「自分の目にはかわいらしく映るんですけど、やっぱり群生相になった時の被害というのは、悪魔として恐れられているだけのことはあるんです」と前野さん。

「農作物の被害は年間400億円以上だと言われていますし、2003~2005年に大発生した時には、防除のために560億円もの費用が使われました。もう、政治・経済が複雑に絡んだ国際的な問題なんです」

サバクトビバッタのマーチング・バンド。(写真クリックで拡大)

 ぼくが前野さんとフィールドに入った時点で、幼虫たちのバンドがマーチングといわれる行進行動を取っていたというのは、前回述べた通り。通り過ぎた後にはぺんぺん草も生えない(というか食べられてしまっている)という禍々しさとは裏腹に、マーチング・バンドって、つまり鼓笛隊か! という響きには脱力する。しかし、これがやがて成虫になって飛翔能力を得ると、最大で500キロもの長さにわたる、それこそ関東地方を覆い尽くせるほどの群れに発展しかねないそうで、その猛威たるや想像するだに怖い。それほどの力を潜在的に秘めた幼虫の「鼓笛隊」は、さわさわしゃりしゃりと植物を食べる音を響かせつつ行進していくのだった。

 前野さんによると、ぼくたちが見たのは、主に三齢幼虫と四齢幼虫からなる混成隊だ。少数だが五齢幼虫もおり、四齢幼虫との違いを見せてくれた。ぼくが一瞬「スズメバチ」に見立てた模様は、実際にはもっと緑がかっていた。三齢と四齢の差は、ぱっと見たところ体の大きさと翅の大きさだ。いずれも、飛翔能力はない。四齢幼虫は、この後、脱皮すると終齢幼虫となり、成虫の一歩手前となる(時々、さらにもう一度多く脱皮する者もいる)。

四齢幼虫と五齢幼虫の比較。向かって右の小さいほうが四齢幼虫。(写真クリックで拡大)