「あんたら死ぬよ」と呆れるフィリピン人をよそに、ルソン島北部の山中に狩猟生活を続ける先住民族「ネグリート」の村を目指した。じっとり湿った森の中、道なき道を進んだ。山中の畑仕事に向かう水牛の糞や、珍しいのかどうかもよくわからない草木を踏み分けて、ただただ新種らしきウナギを目指した。
 そもそも文明とは一線を画している狩猟民族である。捕まってひどい目に遭わされるのではないかとおびえつつ、見上げんばかりの断崖に切り取られた川岸をソロソロと伝い歩いた。そうして苦心の末に辿り着いてみれば、言葉も通じぬネグリートの人々は温かかった(写真4-5)。縄と銛と犬だけを武器に森の中から狩り取ってきた野豚をご馳走してくれた。捕まえたウナギとそこらに生えている草でスープを作ってくれた。電気もガスも水道もない村の夜空は、満点の星と蛍の光に満ち溢れていた。

写真4,5:言葉も通じぬネグリートの人々は温かかった。(写真クリックで拡大)

そして、我々はネグリートの人々の手を借りて、ついに目指すウナギを手に入れることに成功したのだった(写真6)。発見したウナギ属(Anguilla)の新種には「luzonensis」(ルゾンネンシス)という名前を付けた。ここには、ルソン島の自然や人々への敬意を込めたつもりである。

写真6:ついに青山氏が発見した新種のウナギ。(写真クリックで拡大)

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