ヤバいウナギ―発見されたばかりの無垢な熱帯の新種にも伸びる「魔の手」
このところしばしば報じられるウナギの危機。それはニホンウナギやヨーロッパウナギにとどまらず、2009年に発見されたばかりの熱帯ウナギの新種にまで及んでいるという。ウナギとしては70年ぶりとなるその新種を発見し、記録として『にょろり旅・ザ・ファイナル』を上梓したウナギひと筋20年以上の研究者、青山潤氏が警鐘を鳴らす。
今、ウナギがヤバいことになっている。すでにニュースなどで報じられている通り、蒲焼きとして馴染み深いあの「鰻」(ニホンウナギ)が絶滅の危機に瀕している。原因として、乱獲や河川環境の悪化、地球規模での環境変動など様々な要因があげられている。これら全てが複雑に絡み合い、今の事態に立ち至ったことに間違いはなかろう。しかし、主要因は何か、どうすれば確実に鰻が増えるのかと問われれば、今のところ誰にもわからないというのが正直な答えだ。20年以上もウナギ一筋に研究を続けてきたはずの私にもわからない。まずは漁獲規制など、できることから始めるほかあるまい。
「これまで何をしてきたのか!」「本当に研究をしていたのか!」と怒鳴られるかもしれない。鰻だけでなく、我々ウナギ研究者と呼ばれる人間にとってもヤバい事態である。
ヤバいのはなにもニホンウナギと研究者だけではない。世界に生息するウナギ属魚類全19種も実にヤバい事態に陥っている。彼らの多くは赤道熱帯域に生息し、これまでほとんど人と関わることなく、ひっそりと生きてきた。逆の見方をすれば、人間は彼らについて何も知らないということになる。そんなウナギたちに、今、大規模な商業開発の波が押し寄せようとしている。不漁続きで高騰する蒲焼き界の大スター、ニホンウナギの代役として、世間知らずの無垢な熱帯の少年少女が無理矢理舞台に上げられようとしているのだ。

絶滅の危機に瀕するウナギ研究では世界をリードする東大の中年研究者2人と老年作家のトリオが、70年ぶりの新種ウナギ発見という偉業を成し遂げるまでの汗と泥と、そして水牛の糞にまみれた、感動と爆笑の記録!
374ページ
発行:講談社
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