第1回 バッタ博士とモーリタニアの砂漠でバッタにまみれる
「川端さん、運が良すぎですよ。さっそく、お見せしたかったものがいました。自分も、ここにきて、ちゃんと会えたフィールドトリップは、3年いる中でもこれで5回目ッス」
車の中から目を凝らすと、赤茶けた砂地に背の低い草がところどころ密に生えていた。
そして、緑に紛れて、あるいは砂の裸地の上に、黄、緑、黒といった色がまざった小さなものが、もぞもぞと動いているのだ。
風に揺れる花、というのは、一瞬なら、そう錯覚することもありえる。
ただ、なすがままに揺れる動きとは違う。
地面を這う動物の群れだ。
スズメバチがアリのように地面の上でうごめいている、というのがぼくが抱いた最初の印象だった。さらに『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部で登場する「ハーヴェスト」というスタンド(興味ない人、意味不明でゴメンナサイ)を想起した。
「これがサバクトビバッタの幼虫の群生相のマーチングですよ。幼虫の群れのことをバンドと言って、みんな同じ方向に向かって一斉に行進していく行動をマーチングといいます。本当に、よかった。とにかく、自分、これを見せたかったんですよ!」
前野さんは興奮して言った。
ぼくは夢中になって写真を撮ったわけだが、このファーストコンタクトはかなり強烈で、意識がぼーっとなってしまったほどだ。
それでも、一応、自分なりに観察をして気づいたことがいくつか。
(動画撮影:川端裕人)