――野口さんの写真集の中にもありますが、他の著作にも「ものごとにはA面とB面がある」というようなことをよく書かれていますね。

 ええ、写真集の構成でもそれを意識しています。「生」と「死」もそうですが、人を寄せつけない厳然としたヒマラヤの山々と、そこで暮らす人々の生活、野生動物の姿を求めて今や世界中から観光客が訪れるケニアのマサイマラ国立公園と、ゴミを漁る人々が集まる首都ナイロビのゴミ捨て場というふうに。

――それは野口さんがものを見るときの視点、心構えのようなものなのですか。

 「ものごとにA面とB面がある」というのは、実は子どものころから父に聞かされていた言葉なんです。

 父は外交官でしたが、赴任した国ではいろいろなところへ僕を連れて行ってくれました。しかし、楽しいとか、うれしいとか、心地よいとか、そういう場所ばかりではなかったですね。

 たとえば、小学3年か4年のころ、エジプトに住んでいたのですが、父がイスラエルへ行こうといったんです。ところが、僕の母はエジプト人で、アラブ系だから絶対に行かないと言い張る。アラブ人がイスラエルに行くのは危険ですからね。父と二人で行きました。

手元の写真は野口さんの写真集『野口健が見た世界』(クリックで拡大)

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