第4回 世の中のB面にこそテーマがある

――とにかく現場を見なさい。そうしなければ本当のことはわからない。それも今の野口さんのさまざまな活動と重なりますね。

 家に戻ってから父は僕に「どう思った?」と聞くんですね。なぜ、そんなことを聞くのかと、僕は逆に尋ねたんです。すると父は「お前のように、まだ世の中がよくわかっていない者が、先入観なく見て感じたことは意外と大事なんだよ」というのです。それでようやく、父が僕を連れまわした意味が少しわかりました。

 ただ、今となっては本人は覚えてないんです。「そんなこと言ったかな」と。父は、僕に何かを教えようと、そういう話をしていたのではなかったと思います。自分の考えを、そばにいる息子にそれとはなしに語りかけていただけではないでしょうか。

――それでは、最近通い始めたというアフリカの魅力と、今年の抱負について最後にうかがいましょう。

ケニアのマサイマラ国立保護区(撮影=野口健)(クリックで拡大)

(つづく)

野口健(のぐち けん)

1973年、アメリカ・ボストン生まれ。1999年、七大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。2000年から「富士山が変われば日本が変わる」をスローガンに富士山清掃をスタート。他にもシェルパの子女への教育援助、戦没者の遺骨収集など精力的に活動を展開中。主な著書に『落ちこぼれてエベレスト』(集英社)『それでも僕は「現場」に行く』(PHP研究所)、昨年、初の写真集『野口健が見た世界 INTO the WORLD』を刊行。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。