第3回 植村直己に教えられたこと

 目標にしてきました。でも、とても直己さんのようにはなれませんね。

 ただ、僕は登山家として世界各地へ行くようになってから、その先々で直己さんと出会うんです。

 たとえば、ネパールへ行って、僕が日本人だというと「お前、ナオミを知っているか」と聞かれる。南米最高峰のアルゼンチンのアコンカグアに行ったときも、アラスカのイヌイットの村に行ったときも同じことを聞かれました。

 世界的に実績のある冒険家は多いのですが、地元の人々にエピソードが語り継がれる人はそうはいないと思います。

――どうして植村さんは、それほど地元の人に親しみを持たれているのですか。

 直己さんは、いつも現地のコミュニティーに、溶け込むように入っていくんです。

 北極点単独行のときも、準備のためにグリーンランドのイヌイットの村に住み込んでいます。犬ぞりの扱いもそうですが、極寒の北極圏で行動するには、彼らの生活習慣や文化から学ばなければならないと、彼は考えていたのです。

2012年4月、ネパール・サマ村にて(撮影=野口健)(クリックで拡大)