第3回 植村直己に教えられたこと

――しつこさ、くどさ?

 奥さんに話を聞いたことがありますが「あの人は本当にしつこいし、くどかった」と言っていましたよ。

 たとえば、直己さんのマッキンリー(北米最高峰・アラスカ州)単独登頂。1968年に初めて挑戦しますが、単独登山が許可されずに断念し、1970年に再挑戦しています。このとき直己さん、単独登山の許可を求めて、アラスカの国立公園事務所に毎日通うんですよ。来る日も来る日も。すると、何日目かに公園長が直己さんに言うんです。

 「ナオミ、君は今、登頂しているアメリカ隊のメンバーだったね?」

 アメリカ隊の一員ということにして、目をつぶってくれたわけです。アメリカの公園事務所スタッフは規制に厳しいから、ふつうならそうはいかない。

 しつこい、粘り強い、スマートではない、がむしゃら。世界的な冒険家というだけではなく、それ以上にその泥臭い生き方に感銘を受けました。

――植村さんをモデルとして、登山家・野口健のスタイルが形づくられたのですね。

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