第72話 決死! 雪のこんもり壁に挑む!

 なぜだか私は、「もしかするとアレも必要になるかもしれない」と玄関を出る間際になって、いろいろとカバンに詰め込むことがある。

 それはいつも荷物になるような余分なものばかりで、例えば、荷作り用ロープだとか、ガムテープだとか、接着剤、万能ナイフ、風呂敷、タオル……など。わざわざ携帯する必要のないものばかり。

 私は不便なところに長く行くことが多いので、そういった物を準備することもあるけれど、玄関先でピーンと直感が働いて、頭の中になにかしらのアイテムが浮かんでくることが多い。

「あ~もう! こんなもの必要になるワケがない!」
 と放っておけばいいのだけれど、実はこれが、必ずと言っていいほど、
「あら~、持ってきて正解だったわ!」と言うことになる。

 これは予知能力なのか、それともこういった余分な準備をするとパプニングを呼び寄せてしまう性質なのか、不思議なことに今まで、「用意したけど使わなかったね~」と言うことがあまりないのである。

 もしかしたら私は、ひとり旅のし過ぎで、なんでも自分で解決しなくちゃいけない精神が染み付いているのかもしれない。

 そんな私は、犬橇から放り出されて、氷点下の中で水に濡れたときも、
「あ、またあの直感が当たってしまった」と、頭のどこかで思った。

 濡れた服は、雪の中に転がることで乾かすことができたけれど、手袋だけは、もはや手遅れというほどに水を吸い込んでいる。

 それを見たトーニャは、この先の道のりを考えると、ひどく心配をしていたが、私はというと、直感が当たったことに喜んでいて、ニコニコしながらトーニャに言った。

「それが! なんと! 手袋の予備があるのよ!」

 もしかしたら、私は科学では説明のつかない能力の持ち主では?という顔で言う私に、トーニャはとりあえずほっとして胸を撫で下ろしていた。

 そして、彼女は言った。

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