ドラゴンの異名をもつコモドオオトカゲ。世界最大のトカゲと人間がともに暮らすインドネシアの島々で、保護活動の試行錯誤が続く。

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21世紀に生きる“ドラゴン” コモドオオトカゲ

ドラゴンの異名をもつコモドオオトカゲ。世界最大のトカゲと人間がともに暮らすインドネシアの島々で、保護活動の試行錯誤が続く。

文=ジェニファー・S・ホーランド/写真=ステファノ・ウンターティナー

 ドラゴンの異名をもつその生き物は、地球の度重なる変動を生き抜いてきた。
 体長3メートル、体重90キロ近くにもなるコモドオオトカゲ(Varanus komodoensis)は現生では世界最大の巨大トカゲ。この種が分岐したのはおそらく500万年ほど前だが、オオトカゲ属には4000万年もの歴史がある。

 コモドオオトカゲの生態はトカゲの典型と言っていいだろう。
 日光浴をし、獲物を狩り、死肉をあさる。卵を産んで守るが、ふ化した子どもを育てることはない。寿命は30~50年で、生涯の大半を単独で過ごす。生息地域は極めて狭く、インドネシアの限られた島々でしか見られない。

猛烈なダッシュ力と毒をもつ“凄腕ハンター”

 このトカゲは貪欲なハンターで、短距離なら時速20キロで走れる。捕まえた獲物は腹を引き裂くか、脚に深い傷を負わせて動けなくする。
 伝説や物語のドラゴンなら火を吐くところだが、現代のドラゴンは毒のある唾液を分泌する。唾液には血液の凝固を妨げる作用があり、かまれた相手の多くは失血死するか、傷口から病原菌が入るなどして死に至る。そしてコモドオオトカゲは獲物の死を辛抱強く待ち続ける。

 死肉もあさる。そのほうが生きた獲物を狩るよりエネルギーの節約になるのだ。腐りかけた死骸のにおいを何キロも離れた場所から嗅ぎつけ、どんな部位でも選り好みせずにたいらげる。

 こうした習性はいささか不気味と思われるかもしれないが、島の人々は必ずしもコモドオオトカゲを恐れたり嫌ったりしてきたわけではない。
 コモド島の村で老人に尋ねると、島人たちは「あの動物を自分たちの先祖だと思っている」という。「神聖な存在なんだ」。かつては島民がシカを狩ると、肉の半分は“うろこをもつ親類”への供え物として置いてくるのが習わしだったという。

 だがその後、状況は変わりつつある。
 正確な数字は不明だが、コモドオオトカゲの数はこの50年ほどの間に減っているとみて、政府が保護に乗りだした。主に保護論者の声に応えるためだが、オオトカゲの観光資源としての経済的価値も見逃せない。1980年、コモド島とリンチャ島の全域および周辺の小島を含む生息地の多くが、コモド国立公園に指定された。後に自然保護区が三つ加わり、そのうち二つはフロレス島にある。

 国立公園内ではコモドオオトカゲだけでなく、その獲物となる動物も保護されている。つまり、人間がシカを狩ることは禁止され、もはや村人が肉を供えることもできない。そのせいで、トカゲたちが気を悪くしていると言う者もいる。

 人間を襲うことはめったにないが、最近いくつかのニュースが報じられた。昨年には、体長2メートルを超すコモドオオトカゲが国立公園内の事務所に入り込み、2人のレンジャーの左脚にかみついた。彼らは空路でバリ島に運ばれて手当てを受け、事なきを得た。別の場所では、83歳の女性が体長2メートル超のトカゲを、手製のほうきと正確なキックで撃退している。女性のほうも手をかまれ、35針も縫った。2007年には、サッカーの試合の合間に木陰で用を足していた少年が襲われ、出血多量で命を落とした。

 今ではコモドオオトカゲがうろついていると、村人たちは大声を上げて石をぶつけるようになった。人間を襲った“前科者”のトカゲは政府が村から遠い場所に移送しているが、大抵は元の場所に戻ってしまうようだ。

※ナショナル ジオグラフィック2014年1月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 コモドオオトカゲの写真をじっと見ていると、「これにまたがって、どのくらいまで振り落とされずに行けるかしら」と、つい考えてしまう私。情報を探して、ある動物研究家の著書を読んだところ、「乗りたい!」という彼の夢は、あっさりきっぱりレンジャーに断られたとか。本誌を読んで同じ野望を抱いた方、残念でした。(編集H.O)


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