マヌエルさんと息子の政則さんと孫のアレグリアちゃん

 彼が言うには、セビチェはもともと海沿いにある首都リマの料理だという。
ペルーは海、山、ジャングルと大きく3つの地域に分かれていて、それぞれ文化も食事もまったく異なるが、セビチェは人びとの移動、交通の発達などによって全国に広がった。「いまではどこでも食べるし、レストランに行っても最初に食べる料理。店の味はセビチェでわかると言われるほどです。私はジャングルの出身だけど大好物なんです」とマヌエルさん。

 なぜ国民食にまでなったのかと聞くと、「さっぱりしているので、飲み過ぎた後にピッタリだからかな」と笑う。それはジョークだとして、セビチェの「さっぱり感」をもたらしているレモンはインドが原産で、スペイン人が南米に持ち込んだもの。コリアンダーも地中海地方が原産である。

 太平洋に面し、年間漁獲量が世界4位(2011年FAO調べ)というほど魚介類が豊富なペルーでは、魚を生で食すこと自体はスペインに征服される前にも見られたようだ。そこに登場したレモンやコリアンダーは、味もさることながら、ともに消臭効果や殺菌作用を持つことから、冷蔵技術のない時代に生活の知恵として取り入れられ、定着していったのではないか。

 日本の影響も垣間見える。日本人が南米に移住を開始したのは明治32年(1899年)。その最初の移住地がペルーだったという。セビチェにはタコも使うが、日本人がくるまでペルーにはタコはいたけれど食べる習慣がなく、日系人が経営するレストランがタコのセビチェを出したところ、人気に火が付いたそうだ。

白身魚やエビ、イカ、タコを揚げた「ハレア」もペルーの代表的な料理。玉ネギと唐辛子、コリアンダー、レモン汁、塩、味の素でつくるソースをかけるのがペルー風。濃いめの味付けなので、付け合わせのジャガイモと相性もよい
魚介を、ニンニクやクミン、ターメリック、ショウガなどの香辛料で豪快に煮込んだペルーの家庭料理。一緒に出されたごはんによく合いました!

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