第15回 ペルーの国民食は日本風味!?

 照れるマスミさんにみんなが祝福の声をかける。家までの道すがら、通訳士になりたい理由をマスミさんはこう語っていた。「幼い時に来日してからは外では日本語、家ではスペイン語なので、今では2カ国語を話しますが、両親は日本語があまりできないので、私が通訳しているんです。そうするうちに、言葉をつなぐ仕事に就きたいと思うようになったんです」

 マヌエルさん一家もマスミさん一家も、1990年代初頭に頻発していたテロから逃れるため、縁ある日本にやってきた。政情はだいぶ落ち着いたものの、いまだペルーの犯罪率は高い。だから祖国には戻らず日本に永住するだろうとしつつも、マヌエルさんは言う。「両親や他の親戚はいまもペルーにいるので、それを思うと心配だし、さみしくなります。だからこそ家族の食卓は大事にしたい。セビチェを食べながらいろいろな話をするんです。ペルーにいた頃を思い出しながら」

 国民食であるセビチェは、彼らにとって祖国を身近に感じられる料理でもあるのだ。オルフィリアさんが次々とペルーの家庭料理を振る舞い、マヌエルさん一家の食卓は空が薄暗くなる頃まで笑い声に包まれていた。久々にあたたかな家庭の味に触れ、私も母の味噌汁が飲みたくなった。今年の年末はちゃんと実家に帰って食卓を囲もうと思う日曜日であった。

食卓を囲むマヌエルさん一家。手前の女性がマスミさん。一番奥の男性が義理の息子さんのフェルナンドさん

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮