――苦労というのは?

 これは、12の短編を集めたような本ですが、見聞きしたことをそのまま書くと、ただの料理紹介になってしまいます。書くのにそう苦労はしませんけれど。

 僕はそうならないように、自分なりに読者の心をつかむポイントをつくりたいと思ったのです。驚きであったり、笑いであったり、あるいは現場の実感であったり。外国から日本に移り住んだ家族やコミュニティーに、どんな生活があるのか。

――高野秀行にしか書けないものにするというところに、苦心されたわけですね。

 そうです。しかし、僕にとってはとても勉強になりました。

 この本は、在日外国人を総ざらいするような中身になっています。その背後に、どこの誰を取材対象にするかという段階から、実はものすごい量のリサーチデータがあるんです。

 もちろん、わからなかった部分もあります。わかったけれど、余地がなくて書けなかったとか、あえて書かなかったこともあります。しかし、そうして膨大な量の調査をしたおかげで、在日外国人が今、どういう状態なのかがきれいに整理されて、自分のなかにストックされた。それが僕にとって、最も大きな収穫でした。

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