第2回 辺境の日常を伝える意味

――そういう話を日本に持ってきても、案外とみんな楽しそうに暮らしているとなったら、メディアはとりあげませんね。

 ニュースになりませんからね。
 僕は、日本人の知らない土地、知らない民族の日常を伝えたいと思って、ずっと仕事をしてきています。

 ちまたで流される情報は、政治と紛争、難民のこと。できごとばかり発信されます。その民族がどういう文化を持っているのか、どういう気質なのかということが、その情報からはまったく伝わってきません。

 たとえば、チベット人についてもできごとばかり報道されるので、中国の侵略を受けたかわいそうな民族とイメージされます。
しかし、実際に会うチベット人は、すごく気が強くて抜け目なく、商売のうまい人々です。そういうことは、ふだんの報道からはわかりませんね。

 非日常的なできごとの情報ばかりで、日常を知らなければ、事実はわからない。その国や民族をきちんと理解することができないと僕は思う。というか、僕自身、納得がいかないんですよ。

――それは現地の人と暮らしをともにしながら取材をしてきた高野さんだからこそ知り得ることといえますね。