ウィル・スティーガーは、城を建てているこの敷地のことを、自ら「ホームステッド」と呼んでいます。

 ホームステッドというのは、「家のある土地」という意味です。

 アメリカでは、かつて馬車に乗って西部を目指した開拓民たちが、手に入れた農地を開墾し、家を建てて定住した土地というイメージが強く残る言葉です。

 いまでこそ別荘地としても人気のあるイリーですが、ウィルがこの土地を買ったのは19歳のときだったそうですから、その当時、この辺りの土地の価格は、あってないような時代だったのでしょう。

 そもそも、冬の寒さが厳しくて、道路もなく、農地にも適さない僻地の森を買いたいなんて人間は、探検家を志すウィルぐらいだったのかもしれません。

ビーバーの棲む川に雪が降った。こうして緑の草を食べられるのも、あとわずかの期間だろう。(写真クリックで拡大)

 その後、ウィルは、夏はカヌー、冬はスキーやカンジキを利用してこの土地に通い続け、ピケッツ湖を望む岩場の上に、自分の小屋を建てました。

 そして、購入から6年後の1970年からは、ここに生活の拠点を移して、1年を通して暮らし始めたのです。

 すこしずつ土地を買い足し、ついには犬ぞりの訓練にも使えるように森を切り開いて、基地としての整備をしました。

 自動車が通れる道も作り、城を建て始めたのは、南極横断の計画を実行に移す直前の、1988年のことでした。

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