第1回 超速とカート宴会の国

――日本の中世武士団は、領国を持てば一国一城の主で、考えることは一族の繁栄とその継承。そのために抗争を繰り返しました。

 そこがよく似ているのです。室町から戦国時代にかけての日本人の気質が、ソマリ人に近いという話は、明治大学で中世を専門としている清水克行先生(商学部准教授)にも聞きました。

 名誉を重んずる意識と、仲間意識が強い。自分の所属する集団が被害を受けたら、仲間で復讐する。荒っぽくて、やられたらやり返すし、ほしいものは奪いに行く。

 ソマリ人は、本来は遊牧民です。干ばつが起きて、ヤギやラクダを遊牧する土地がなくなると、誰かが先にいる放牧地でも入り込んで行く。相手も黙っていませんよね。そこで抗争が起こるわけです。死者が出ようものなら、血で血を洗う戦いになる。

 それが現代では、お金と土地をめぐる争いになっているわけですが、ソマリアの内戦が中世的な氏族間の対立に由来するというところに目を向けないと、この国を見誤ってしまいます。

――その状況下で、ソマリランドがなぜ武装解除に成功したかは著書に譲るとして、高野さんにとって、ソマリアを描く魅力をうかがうことにしましょう。

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(つづく)

※1『国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ!』 吉田一郎著(ちくま文庫、2010年)

高野秀行(たかの ひでゆき)

1966年、東京都生まれ。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)でデビュー。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。それをおもしろおかしく書く」をモットーとし、アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表。主な著書に『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』『ミャンマーの柳生一族』(以上、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。