第1回 超速とカート宴会の国

――それで「カート宴会」が取材の場として重要になるわけですね。カートは覚醒作用のある植物で、ソマリ人は仲間同士が集まっては、この葉を噛んで会話を楽しむ。そこに高野さんはもぐりこみます。

 超速民族ですから、落ち着いて話を聞こうとすれば、カート宴会の席しかないんです。現地の人も、まとまった話は、そういうところでしているようです。

――高野さんは、ソマリア国内に割拠する勢力を「源氏」や「平氏」など、日本の中世武士団になぞらえていますが、これは?

 ソマリアは、日本の中世とよく似ていて、氏族単位で成り立っている社会なんです。この国で紛争が絶えないのも、ソマリランドで武装解除できたのも、実はそこに理由があると僕は見ました。

 ソマリアの報道では、内戦の原因は部族間の対立だとされることがよくありますよね。しかし、それは誤解です。部族とは民族の意味で、ソマリアの民族はソマリ人ひとつ。言語も文化も同じです。つまり、原因が部族間の対立だとすると、内戦が続いている説明がつかない。

 一方、多民族国家は先進国にもたくさんありますが、それらの国々では平和が保たれていますよね。だから、多民族国家であることが、紛争の絶えない原因だとすると、これも筋が通らないのです。

ソマリアの海賊の拠点であるプントランドの海辺で、護衛の兵士たちと一緒に(写真=高野秀行)(写真クリックで拡大)