3.11津波、巨大化の原因は滑りやすい粘土層であることを解明

 東北地方太平洋沖地震で巨大な津波が発生した原因は、プレートの境界にある滑りやすい粘土層にあることを、JAMSTEC(海洋研究開発機構)と筑波大学、京都大学などの研究チームがつきとめた。これは2012年に地球深部探査船「ちきゅう」で震源域の海底を掘削調査した成果で、12月6日付の米『サイエンス』誌に関連論文3本が掲載された。

東北地方太平洋沖地震はこうして起きた(提供:JAMSTEC)(クリックで拡大)

 この地震では、陸側のプレートの先端部分が水平方向に50メートル、垂直方向に10メートルも大きく滑り上がったことが、大津波の直接の原因であることがわかっている。これは「プレート先端は大滑りしない」とする従来説に逆らう珍しい現象だった。
 今回、研究チームは「ちきゅう」で宮城県沖、水深7000メートルの深海底をさらに850メートルにわたり掘削、実際にこの大滑りを引き起こした海底下の断層を採集・分析することで、その要因をつきとめた。

スメクタイトは粘土鉱物の一種。東北沖(日本海溝)ではスメクタイトの割合が飛びぬけて多い(提供:氏家恒太郎)(クリックで拡大)

 断層のサンプルを筑波大学の氏家恒太郎准教授が分析したところ、その78%がスメクタイトと呼ばれる粘土でできていた。スメクタイトは化粧品のファンデーションなどにも使われる粘土鉱物で、保湿性があり滑りやすい。火山灰などが海底に堆積し、変質してできたものと考えられている。太平洋プレートが陸側プレートの下にもぐり込むにつれ、この粘土層が固い両プレートの境界にサンドイッチされた状態になっていた。地震が起きれば大きく滑る条件は整っていたわけだ。

 氏家さんはさらに、滑りを増幅させたもう一つの要因もつきとめた。「地震による摩擦熱によって、プレート境界にある粘土層が、まるで水の膜のように滑りやすくなったんです」
 この現象を氏家さんは「Thermal Pressurization(摩擦発熱による間隙水圧上昇)」と呼んでいる。粘土層を挟む両プレートが水を通しにくいのに対して、スメクタイトの粘土層は水分を多く含んでいる。それが地震の発生とともに摩擦熱を受けると、含まれた水分が膨張。水分は上の層にも下の層にも吸収されず、粘土層がまるで流体のように振る舞ったという。

 巨大なプレートの間に水の膜が挟まれている様子を想像してほしい。あの津波を引き起こした50メートルにもわたる大滑りは、もともと滑りやすい粘土と、摩擦熱による流体化によって起きたのだ。

 ちなみに巨大地震の発生が恐れられている南海トラフのプレート境界断層では、スメクタイトの含有率が31%と、東北沖の半分ほどであることがわかっている。「摩擦力は南海トラフの方が大きいと言えますが、だからといって大滑りが起きないわけではありません。津波を引き起こすポテンシャルはあります」

摩擦熱による流体化が起きて、物質が激しく混ざり合った(提供:氏家恒太郎)(クリックで拡大)

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