第69話 暗闇の中の再会

 ソルティーが帰ってきたのは、私が深い眠りのなかにいるときだった。

 トーニャは、寝ながらも気配に気付き、外に出ると、ソルティーが仲間の犬たちに歓迎されながら、走り回っていたのだという。

 私は、その再会を目にすることができなかった。

 しかしながら、真夜中にソルティーが帰ってきたことに気付き、再会を果たしたトーニャはさすがである。

 私など、すっかり耳をオフにして、犬たちの騒音にも気付かずに眠り込んでしまった。

 私は、真っ暗闇のなかで、1人、ソルティーを抱きしめ安堵するトーニャの背中を想像した。

 そこに、私などいないほうがいいのだ。

 なぜならば、それは、トーニャとソルティーの物語のような気がしてならなかったからだ。

 次の朝、私はドッグヤードに行くと、ソルティーはいつもと同じように、そこにいた。まるで、何事もなかったように。

 そして、いつものように時間が流れていた。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/