ブラジルではカウボーイをピヨンと呼ぶ。テンガロンハットをかぶりロープやナイフを持ち、重要な役割の人は22口径ぐらいの銃を持っている。姿恰好は『ローハイド』とかわらない。

 2泊3日で480頭の牛を40キロはこぶ、というのが正式な仕事内容だった。

 そのチームにぼくはおしかけ、下っぱとして働くことになった。ピヨンは全部で8人いて、みんな牛追いのプロだ。そのうちの1人の老人はみんなの飯がかりで、馬とロバに料理、食器道具をくくりつけて本隊より1時間ほど先に出発した。『ローハイド』にもウィッシュボーンという名で同じ役目の人が出てきた。あの頃と牛追いの役割の基本は変わらないのだ、ということを知ってぼくは嬉しくなった。

 そうして隊長の簡単なその日の行程説明があり、380頭の牛の群れはそうぞうしい鳴き声とすさまじい埃をまきあげてゆるゆると出発した。

 雨期前のパンタナールは乾いていて、とにかくかれらの巻き上げる埃がもの凄い。カウボーイが常に首に大ぶりのスカーフ状のものを巻いているのはまったくの実用からだ、ということがすぐわかった。あわててこれで鼻と口を覆わないとえらいことになる。

 ともするとブッシュの奥に逃げ込もうとする牛や方向違いに逃げようとする牛を大声で叱りつけ、ムチを地面に叩きつけ、全体の統制をとって正しい方向にむかわせる。それだけでも早くも大仕事である、ということをぼくは知った。

(撮影:椎名誠)(写真クリックで拡大)

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