その頃、たくさんの魅力的な連続テレビ映画が放送されていたが、ぼくがとりわけ熱中したのは『ローハイド』だった。西部劇であるがひとつの目的を持った男たちの集団旅の記録でもある。少年時代の影響力、魅力世界のスリコミというのはおそろしいものだ。ぼくは青年の頃からおなじ年齢ぐらいの仲間を集めてよく旅に出るようになった。なんといまだに20人ぐらいのメンバーとテント旅などやっているのだ。本当は家の日溜まりでネコのムダヒゲでも抜いていてもおかしくない歳なのだが、人生の楽しみは早々に放棄したくない。それもこれもすべて少年時代に見た『ローハイド』が始まりなのである。

 大人になっての夢のひとつは、一度でいいから『ローハイド』を、本物の牛追い旅を、見学ではなく牛追いの1人としてやってみる、ということだった。馬はどんな国のものでも自在に扱える。きちんと時間をかけて教えてもらえば突っ走る牛の首に投げ縄の輪をひっかけるぐらいはやれる自信があった。

 チャンスはやってきた。ある長時間のTVドキュメンタリが、ぼくのそういう要望をきいてくれたのだ。よくあるちょこっと真似ごとをする、というやつではなく、ちゃんと下働きとしてチームに加わって旅するのだ。カウボーイの本家アメリカでは、もう映画にあるようなカウボーイが泥だらけになって数100頭の牛を移動させるような仕事はなく(ほとんどトラック移送に変わってしまった)いまやっているのはブラジルのパンタナールあたりらしい。

 パンタナールはブッシュや沼などがたて込んでいてトラックで大量の牛を移動させるには地形的に難しい。そこでまだ『ローハイド』とおなじ仕組みの仕事を行っているのだった。

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