第1回 野生のテングザルの研究フィールドに行ってみた!

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 テングザルは、様々な意味で不思議な霊長類だ。

 まず、外見。和名の「天狗」を彷彿する長い鼻は一度見たら忘れられない。特にオスの鼻は大きい。「唇が隠れてしまう」ほどだったという、芥川龍之介の「鼻」の主人公に匹敵する。

 おまけに、ぽんぽこりんの太鼓腹。オスの方がメスよりも2倍も重たく鼻も立派になる「性的二形」(雄雌によって姿形が大幅に違うという意味)も含めて、こと「見た目」ついて話題に事欠かず、まるで物語の世界から飛びだしてきた存在のように思える。

 その他の面でも、目を惹くポイントがたくさんある。

川に飛び込むテングザル(撮影:大谷洋介)(写真クリックで拡大)

 ボルネオ島だけにいる固有種で、川に強い愛着を示す。川に近い森を群れで動きながら暮らすが、夕方は必ず川沿いに戻ってきて朝までそこに留まって眠る。そして、しばしば、何かのきっかけがあると、集団で次々と川に飛び込み、対岸へと泳ぎわたる行動をとる。10メートル以上の木々からの豪快なダイビングは、テレビなどで見たことがある人も多いだろう。

 さらに、食べ物の嗜好の極端さ。リーフイーター(葉を食べる動物)極まれりというほど葉っぱばかりを食べていると長らく思われており、間違って甘い果実などを与えると、葉を消化する共生微生物のために腹の中で異常発酵が起こり、死んでしまうという説まである。

 おまけに希少種だ。絶滅危惧の度合いが高いワシントン条約の附属書Iに指定されていて、日本では横浜の動物園ズーラシアでしか見ることができない。

 しかし、野生の群れを見るのは、その場に行けば、比較的簡単だ。川沿いの木々の上で眠る習性から、夕方か朝にウォッチング船に乗れば、たいてい船から見ることができる。生息地に近い、スカウ村では観光産業が育っており、複数の業者がテングザルを見るためのボートを出している。

 ぼくは2010年にスカウを訪ね、はじめて野生のテングザルを見た。そして、気鋭の霊長類学者で、テングザル研究の若き第一人者、松田一希さん(現・京都大学霊長類研究所助教)と出会った。

 再訪して松田さんのフィールドを見せていただく相談はずっとしていたのだが、このたび、やっと実現した。

京都大学霊長類研究所助教の松田一希さん。(写真クリックで拡大)
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