File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第4回 男たちは何故、ちきゅうに乗るのか

ヘリデッキから眺める夕日(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

 30人乗りのヘリコプターが発着可能というこのスペースでは、水平線から昇る美しい夜明けの太陽を眺めたり、運動不足解消のためランニングをしたり、運動場としても活用されている。

 ただし、釣りは禁止。これもまた、安全第一。

 景色を眺めていると、柄にもなく哲学的になってくる。
 なぜ人は、船に乗るのだろう。

 なぜ船に、しかもちきゅうに、乗っているんですか!
 近くにいた澤田さんがとばっちり。

「なんで乗ってるのか、って……」

 石油掘削船で仕事をしている人たちが、高給を得ているということはよく知られている。もちろん仕事はヘビィだが、その分、待遇は恵まれているのだ。
 その仕事を辞め、なぜ、JAMSTECのスタッフに転じたのか――。

「それはやっぱり、誰もやったことのないことをやれているからです。それは何にも代え難い魅力ですよ」

 なるほど。そこは、研究者と同じなんですね。

 ちきゅうは今、南海トラフでの探査中だ。前回、悪天候で緊急離脱を余儀なくされた海底へ戻り、残してきた仕事を再開している。
 その後も、ときおり新宮や清水に寄港しては、また次の探査へと出港する。

 ちきゅうには母港がない。本籍にあたる船籍港はJAMSTECの本部がある横須賀だが、めったに帰れない。
 故郷へも帰れない。岡山県玉野市にある三井造船玉野事業所で船体が建造された後に、長崎の三菱重工業長崎造船所で高いやぐらを搭載したため、本州と四国の間に架かる橋をもうくぐれないからだ。

 でも、それでいいのかもしれない。ちきゅうの故郷は、地球なのだから。
 ベタですみません。

(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)


この記事は日経ビジネスオンラインとの共同企画です。
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片瀬京子(かたせ きょうこ)

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、09年よりフリー。共著書に『誰もやめない会社』(日経BP社)『ラジオ福島の300日』(毎日新聞社)など。