File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第4回 男たちは何故、ちきゅうに乗るのか

船内のあちこちがNOBU江口仕様になることも(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

 江口さんは、もともとは研究者だ。本人曰く「ふらふらしてから、勉強したいなと思って」、25歳で琉球大学へ進み、その後、東京大学海洋研究所(現・東京大学大気海洋研究所)で、海底に堆積するプランクトンの化石に関わる研究をしていた。が、徐々に、普通の研究者にはなれても、一流の研究者にはなれないなと思うように。
 そんなとき、迷える江口さんの前に登場したのが、現在のJAMSTECの理事長、平朝彦氏だった。この連載で取材に応じてくれた方に「なぜJAMSTECに?」と聞くと、かなりの高確率で名前が挙がる人物だ。
 当時、IODPの前身組織の事務局長を務めていた平氏に、「事務局をちょっと手伝って」と言われた江口さんは、それを機にサイエンスコーディネーターなどを経て、エクスペディションプロジェクトマネジャー、EPM、つまり研究支援統括への道を歩むことを決めた。

船上代表と、あうんの呼吸で

 研究者は、できるだけ深いところからたくさんのサンプルを引き揚げて欲しいと思っている。技術者も、それに応えたいとは思っている。
 でも、危険は避けなければいけない。
 江口さんは、「ここまでだったらやってもらえるかな」「だとするとここは譲らないといけないな」などと考えて、研究チームを代弁して船上代表と話す。その一方で、技術者を代弁して、研究チームに話をする。

 さっき、船上代表の澤田郁郎さんが言っていた。

「あるとき江口が、『あと30分だけ孔の中での観測をねばってくれ』って言うんですよね。どうせあと30分で終わるわけないと思っていると案の定、『もうあと5分』って。こっちも『なら、あと5分だけね』と受け入れる。それを繰り返していたら、日が暮れたばっかりのはずが、朝になっていたことがあります」

 これは、信頼関係が構築できている証だ。