物陰に身を隠し、足音一つ立てずに獲物を狙うピューマ。絶滅の危機を乗り越え、米国でひそかにその数を増やしつつある。人間は彼らと共存できるのか?

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復活するピューマ

物陰に身を隠し、足音一つ立てずに獲物を狙うピューマ。絶滅の危機を乗り越え、米国でひそかにその数を増やしつつある。人間は彼らと共存できるのか?

文=ダグラス・H・チャドウィック/写真=スティーブ・ウィンター

 チーターでもヒョウでもない大型ネコ科動物、ピューマ。このピューマが今、絶滅の危機を乗り越え、米国でひそかにその数を増やしつつある。

 ピューマはアルゼンチン南部やチリからカナダ北部のユーコン準州まで、米大陸に広く分布するが、目撃されることはめったにない。山に生息しているというイメージがあるようだが、これは本来の生息地に人間が定住し、銃やわな、毒物を使って彼らを追い出した結果だ。

 当初は米政府も猛獣とみなして、駆除を後押しした。このため、かつては本土の48州に生息していた米国のピューマは、20世紀初頭にはロッキー山脈や太平洋沿岸の山地、南西部などの奥地でしか見られなくなった。
 やがて西部諸州でも順次、ピューマの捕獲報奨金の制度が見直され、1960年代までには廃止された。72年には連邦所有地での毒物による猛獣駆除も禁止となった。さらに娯楽目的のピューマ狩りの猟期を制限する動きも広がったことで、ピューマはおよそ300年ぶりに個体数を増やし、以後、順調に復活を遂げつつある。

 ピューマの生息地は、ここ40年で東へと拡大。ロッキー山脈を越えて、グレートプレーンズ(大草原地帯)まで広がった。モンタナ州北部、ノースダコタ州、サウスダコタ州、そしてネブラスカ州西部でも、まとまった数が確認されている。さらには中西部のほぼすべての州や、カナダにも到達していることが、1990年以降200件以上を数える報告例からわかっている。

 目撃されているのは若い雄が多く、繁殖相手を求めて動き回るのか、一カ所に長くとどまることはない。移動の途中で牧場主や警官、密猟者に殺されたり、交通事故に遭ったりするピューマもいて、2011年には、米国東部のコネティカット州でピューマが車に衝突して死んだ事故が話題になった。
 遺伝子を分析してみると、この個体はサウスダコタ州生まれで、3200キロ以上も移動していたことが判明した。米大陸にすむ鳥や魚を除く野生動物では、おそらく最長記録だろう。

 ピューマに人間が襲われた事故は1890年以降、米国とカナダで合計145回とされる。死者が出たのはそのうち20回余り。6年に1回の割合だが、こうした事故の少なくとも3分の1はここ20年の間に起きている。郊外にすむ人間とピューマの数が増え、接触の機会も増えたのだ。

 獲物を待ち伏せて捕らえるピューマは夜行性のため、生態を調べるのは容易ではなかった。だが、科学技術の発達によって彼らの行動を24時間監視することが可能になり、謎に包まれていた多くのことがわかってきた。

※ナショナル ジオグラフィック12月号から一部抜粋したものです。

<訂正>
12月号「復活するピューマ」の本文および写真説明のなかで、「ヘラジカ」とありますが、正しくは、学名Cervus canadensis、一般的に「ワピチ」や「アメリカアカシカ」と呼ばれている大型のシカでした。お詫びして訂正いたします。

編集者から

 自然保護でも世界をリードする米国……というイメージがありますが、自国のこととなると、やはりさまざまな思惑がからむようです。環境に巧みに適応するピューマの能力に感動するその裏で、手放しに「自然万歳」と言えない米国の“大人の事情”に、「おいおい」とツッコミを入れたくなりました。でも悲しいかな、これもまた現実なんです。(編集H.O)

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