ムースの脚の解体を終えると、犬たちにとっては、「夢のご馳走!」と言うほどの大きな骨が残った。

 ところが、このドッグヤードは43匹と大所帯。なのに、骨は1本。これは、犬たちにとっても、私にとっても大問題だった。

 平等に与えるには、チェーンソーか電動丸ノコでも持ってきて、細かく切ってしまえばいい。

 が、なにせ43分割ともなると、骨は粉々になってしまう。

 それでは、カルシウム剤を与えているのと同じで、骨の醍醐味がまったくない。

 やはり骨というのは、歯茎の限界まで、あごの限界まで、ガリガリ、ガリガリとかじるのが犬たちの喜びだ。

 それに、与える方も、1本丸ごとのほうが、与え甲斐があるというもので、これまた喜びが大きい。

 だから両者共に幸せを感じるには、大きな骨が43本あればいいのだが、現実は無情にも1本しかないのだから、頭が痛い。

 悩んだ末に、「今週、良い子だった子に、ご褒美としてあげよう」と、言ってみたものの、ここの犬たちは、みんな良い子である。

 頭を抱えている私の横でトーニャは、意外にもあっさりとしていて、さっさと諦めて、
「どうせ不公平になるのなら、あげない方がマシよ。捨てるわ」
 と、骨をつかみあげて、ドッサッと玄関先の床に投げ捨てた。

「えええ~、もったいない……」

 私は、犬たちの夢を叶えてあげられない悔しさに、大きなため息をついて、うなだれたのだった。

 それからしばらくのことである。ちょっとした事件が起きた。

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