File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第3回 未到のマントルへ、三つの課題

ドリルビットを装着(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

 次の問題は固さ。マントルを目指すとなると、その上にある海洋地殻を掘り抜かなくてはいけないが、この海洋地殻が固い。そのためドリルビットがすぐにへたってしまい、ちょっと掘ったらすぐ交換、となる。手間がかかる。
 交換とひとことで言っても、何千メートルの深さから引き揚げて、取り替えて、また何千メートルの深さまで下ろして、という作業になる。故に、現実的に効率よく掘るなら、へたらないドリルビットの開発を待つ必要がある。

 最後に熱。地下へ深く行けばいくほど熱くなる。マントルに到達するあたりで300℃を超えると推定されているため、その温度でちゃんと働く観測機器も開発する必要がある。

 それに、こうした技術的な課題を克服して、見事にマントルのどこかに達することができたとしても、厚くて広いマントルゆえ、何カ所かのサンプルをもって「これがマントルだ!」と言えるかどうかを検証する必要がある。
 それだけの大事業を実施するほどの意味があるのか。その探検的な意味に加え、科学的な価値について専門家の間で議論が進行中なのだ。

 だからひとまずちきゅうは、マントルという目標を抱きつつも、地震、生命、そして地球の歴史という課題を解決していくことになりそうだ。

つづく

(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)


この記事は日経ビジネスオンラインとの共同企画です。
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片瀬京子(かたせ きょうこ)

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、09年よりフリー。共著書に『誰もやめない会社』(日経BP社)『ラジオ福島の300日』(毎日新聞社)など。