File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第3回 未到のマントルへ、三つの課題

「そうです。まず、生物、プランクトンの遺骸です。それから、陸から飛んでくるダストです。でも陸から遠く離れたところでは、このダストは少なくて、ほとんどが生物の遺骸です。で、その堆積速度は、1000年で数ミリから数センチです」

 数ミリから数センチ。たしか、ちきゅうが持って帰ってくるコアサンプルは、9メートルの長さがあるんですよね。ということは、仮に1000年で5センチとして、9メートルだと……18万年?

「そういうサンプルに記録された地球の歴史、地球環境の変化を調べることも、研究の大きな目的のひとつです」

未到の領域マントルをめざして

 地震、生命、地球の歴史、どれも十分に壮大な目的だが、この船にはさらに壮大な目的がある。もともとは、誰もまだ達したことのない、マントルまで掘ってやろうじゃないかという意気込みで造られた船なのだ。

 マントルとは、地球の地殻と核の間に存在する、海底下でいえば、約7000メートルから約290万メートル(海底下7キロ~2900キロ)までの範囲を指す。
 これまでちきゅうが掘ってきたところは、深いとはいえ、まだまだ表面付近、地殻の一部だ。

 なぜ、マントルなのか。それはまず、人間が誰も見たことがないから。アポロが月を目指したように、未知へのチャレンジということ。マントルの物質を採取して戻ってくるということは、小惑星に行ってそのサンプルを取ってきたあの「はやぶさ」に匹敵する、いやそれをも上回る偉業なのだ。

マントルは地殻の下にある(海底下7キロ~2900キロ)。ちきゅうはそのうち表面に近い上部マントルをめざす(提供:JAMSTEC)(写真クリックで拡大)