File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第3回 未到のマントルへ、三つの課題

紀伊半島沖、南海トラフの断面図。大陸プレートの下に、フィリピン海プレートが潜り込んでいる。赤い縦の棒は、ちきゅうが掘削しているところ(提供:JAMSTEC)(写真クリックで拡大)

 とりわけ多いのが、南海トラフの掘削だ。紀伊半島の南、和歌山県新宮市から少し沖にある地震発生帯を繰り返し掘っている。調査の目的は、もちろん地震発生のメカニズムを解明することだ。

「ちきゅうがサンプルを採取し、地層のデータをとってくることで、地層がどうやってできて、それが地震でどうなったかがわかります。ほかにも、地層の中の力のかかり具合の分布や、地震断層がどう動いたのか、昔の津波の痕跡、地下で水がどんな動きをしてるかなど、いろんなことがわかります」

地震はどうやって起きるのか?

 南海トラフの地震発生帯には、2つのプレート、大陸プレートとフィリピン海プレートがある。フィリピン海プレートは、年間約4センチの速さで大陸プレートの下に潜り込み続けている。

 このとき、フィリピン海プレートの上の堆積物がはぎとられ、大陸プレートにくっついていく。これを付加体という。この付加体とフィリピン海プレートの境界は、最初はゆるゆるしているが、潜り込むにつれて固くくっついてくる。それでもフィリピン海プレートが潜り込み続けると、固くくっついた境界にはどんどんストレスがかかり、ある瞬間に限界に達して、壊れる。そうして地震が発生すると考えられている。

 こうしたプレートの境界周辺には、境界断層のほかに、より上向きの断層が発達することがある。これを分岐断層というが、現在調査している南海トラフの海には、海底の奥深くから海底面まで伸びた特に大きな分岐断層、巨大分岐断層ができている。

「1944年に発生した東南海地震の震源がこの海域にあることは、以前から知られていました。ちきゅうはまず比較的浅いところ、海底下数百メートルにある巨大分岐断層のサンプルを採取するのに成功し、この巨大分岐断層が実際に高速で動いたことを、つきとめました」

 つきとめるまでには、これから潜り込む層やこれから潜り込まれる層などからもサンプルを回収している。リファレンスと呼ばれるこれらのサンプルは、言ってみればbeforeの状態。beforeがあるから、なにがどうなって今のafterになったかがわかるのだ。