翌朝、ノースカントリー・ロッジの資材置き場に張ったテントのなかで目が覚めました。

 しばらくぼうっとしていると、昨日ウィル・スティーガーの私有地で見た、森の中に立つ巨大な城の姿が、ゆっくりと思い出されました。

 やがて、城の内部のひんやりとした空気や木材の匂い、そして、階段を登った足裏の感触までが、はっきりと手触りのある記憶となって蘇ってきました。

 やっぱりあれは、たしかに現実だったようです。

落葉したアスペンの梢に、カラフトフクロウの影を見つけた。(写真クリックで拡大)

 でも、今日からあそこへ引っ越して、1週間を過ごす……それが、いったいどういうことになるのか、まったく想像が出来ません。

 ジムの家の門をくぐったときは滝壺に落ちていく気分でしたが、その後も、流れの勢いは衰える様子もありません。

 とにかく、いつ迎えが来ても良いようにテントを撤収して荷物をまとめると、トムに挨拶をするためにメインロッジに行きました。

 たくさんお世話になったことへのお礼は、何度言ってもきりがありません。

 初日のキャンプ場とバンガローの代金を払おうとしたのですが、いくら言っても、トムは受け取ろうとしませんでした。

「まだ2カ月以上あるんだろ。お金はいいから。それより……良い写真を撮れよ」

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る