政府の予算を見ると、ちきゅうを使った研究プロジェクトに毎年100億円近くが計上されている。JAMSTECの年間予算のおよそ4分の1。すべてがちきゅうの運航に使われているわけではないとはいえ、大きな額だ。それだけJAMSTECにとって重要なミッションと言える。

 だから安易に撤退することはできない。
 一方で、安全第一は譲れない。どこまでは頑張って、どうなったらストップするのか。この判断も、船上代表の大切な仕事のひとつだ。

二階から針に糸を通すような・・・

 このときのように、天候不良など、なんらかの理由で作業途中にライザーパイプを海底から切り離した場合、その後、掘削を再開するには、海底に残してきた孔に再びパイプを接続する必要がある。

 そのために船はどこにいるべきかは、GPSが教えてくれる。その後は、水中無人探査機(世界には、オペレーターごと、これを貸し出してくれる会社があるのだそうです)や水中カメラなどを使って孔の位置を確認する。問題はそこから、いかにして下ろしたライザーパイプをBOPに再接続するか。
 くどいようだが、海中には海流がある。まっすぐ下ろしたつもりでも、まっすぐ下りないのが当たり前。
 針に糸を通す、および二階から目薬、という慣用句があるが、これは、二階から一階にある針の穴に目薬を点すような離れ業だ。

「船ごと動かしますね。『あと1メートル』と」

 全長210メートルの船を1メートル動かすという発想そのものがすごい。しかも、1メートルは1メートルでも、どっち側に1メートル動かしたらいいのかは、船上からはわからないのだ。
 しかし、それを実現してしまう。

ドリラーズハウス。真剣な表情で作業中(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

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