アジマススラスタ(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

 ちきゅうには、風や波、潮汐に流されることなく、海上の一点に自分の位置を保つための、船位保持システムが備わっている。船底に付けた7つのプロペラ(スラスタと言います)を制御することで現在位置をキープする仕組みだ。内訳は、アジマスラスタ6基(4200kW×6)、サイドスラスタ1基(2550kW)。計2万7750kW。

 一方で、ちきゅうの発電能力は、3万5000kW。その時にちきゅうは、流れようとする船体をとどめるべく、ほぼ全電力を船位保持システムに注ぎ込んだ。おかげで居住エリアなど船上のほかの部分は停電している。

 それでも勝てない。ちきゅうは海の底とパイプで繋がったまま、徐々に流され、気づくと、20数メートル流されている。

(写真クリックで拡大)

 こうなると、選択肢はひとつ。緊急離脱だ。ドリルパイプは引き揚げて、固定したライザーパイプを、BOPから下の部分を残して切り離す。
 ただ切り離すだけではダメで、海底に残される孔にはしっかり蓋をしなくては、せっかく掘った孔が埋まってしまう。

 ちきゅうは、繰り返してきた訓練通りに、緊急離脱に成功した。

「そのあと、1.5キロくらい漂流しましたね」

 ギリギリの判断だった、と言えるのでは。
 ここで、そんな危険な思いをするなら、さっさと離脱すればいいのに、とは言えない。

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