(写真クリックで拡大)

 百戦錬磨の澤田さんにそう言わせる黒潮の速度は、最大6ノット(時速11キロ)とも言われる。ノットと言われると弱いんだよなあという方には、全盛期のイアン・ソープが泳ぐ速度をイメージしてもらうとちょうどいいらしい。掘っている間、船がじっとしていたいことを考えると、この流れは相当、速い。
 それでもそこを掘るのは、研究者がそうして欲しいと言うから。

「研究者は常に『もっと、もっと』ですからね。商業的な掘削だったら、石油という成果物が出れば一区切りだけど、自然科学の研究者の知的好奇心には区切りがない。第一、石油掘削では絶対にそんな流れの速いところを掘りません」

 ふたりとも、ライザー掘削には前職の頃から慣れているが、しかし、黒潮があるとなると、勝手が異なるのだ。

海面は30メートル下(写真クリックで拡大)

 さて、甲板上7階にある掘削フロアから階段で少し下ります。少しと言っても、居住棟の高さで言えば、悠々6フロア分。階段の踏み板部分はメッシュが切られていて、階下がお見通し。鈍感なことには自信のあるK瀬ですがちょっとこれは恐ろしい。遠い遠い甲板は見たくない。でも、下を見ずには下れないし……。

 ようやく着いたのが、さきほどのぞき込んだ穴の真下だ。
 目の前には、22メートル×12メートルのプールが広がっている。これは乗船員のための保養施設、ではない。
 海に様々なものを下ろすための、海に開いた扉だ。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る