File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第2回 「ちきゅう」、南海トラフで黒潮と闘う

 2012年の4月と5月、そして7月の二度にわたって行われた東北地方太平洋沖地震調査掘削でも、この難行に挑戦した。
 このミッションでは、地震発生後の緊急調査として準備期間が通常より相当短いなか、ふたつのことにチャレンジしようとしていた。
 ひとつは、地震で滑った断層のサンプル採取。
 宮城県牡鹿半島沖で、実際にあの大地震で滑ったと考えられるプレートの境界断層を見つけて、そこからコアサンプルを採取し、分析にまわす。
 ふたつめは、温度の測定。滑ったということは、摩擦熱が発生しているはずなので、その温度を測る。このために、掘った孔に温度計を差し込み、しばらくそのまま放置して、しかるべき時期に回収する。

Webナショジオ連載「深海7000メートル! 東日本大震災の震源断層掘削をミタ!」(画像クリックで連載ページへ)

 春の航海では、滑ったと考えられる断層を発見し、そこからコアサンプルの採取には成功した。その深さ、水深6889.5メートル、その下の海底掘削深度は850.5メートル。海面から孔底までの総ドリルパイプ長の7740メートルは、ワールドレコードを記録した。
 ところがこのときは、機器のトラブルにより時間切れとなってしまって、温度計のセットまではできなかった。
 詳しくはWebナショジオ連載「深海7000メートル! 東日本大震災の震源断層掘削をミタ!」をご参照ください。

 温度計設置は、夏、再びのチャレンジと相成った。

 前回の孔はもう使えないので、新たに孔を掘る。それだけでも大変なことだが、温度計を設置するには、いったんドリルパイプを回収し、再度、温度計を付けたドリルパイプを挿入しなければならない。

 数千分の1℃まで測れるという高精度の温度計を55個つないで、820メートルの紐状にしたものを作って、直径11センチのパイプに入れる。続いて、この温度計入りのパイプを海底に降ろして、掘った孔を探す。

 これがなかなか見つからない。

研究者の後ろに見えるのが紐状につないだ温度計(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)