File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男
第2回 「ちきゅう」、南海トラフで黒潮と闘う
このプール、ムーンプールと呼ばれる施設はなんのためにあるかというと、たとえば、ムーンプールのすぐ脇に控えている、通称BOPなどを海の中へと下ろすためだ。
前回、ドリルパイプの外側は、海中ではライザーパイプ、海底下ではケーシングパイプが覆っているとざっくりとした説明をしたが、そのつなぎ目の海底部分には、このBOPが設置される。ケーシングパイプの上に乗せ、固定するイメージだ。
ではそのBOPとは何かというと、噴出防止装置。高さ14.5メートル×縦5.9メートル×横5.2メートル、重さ380トンのビッグサイズで何の噴出を防止するのかというと、掘り当てた石油やガスだ。つながっているパイプの中を、石油やガスが逆流したら、大事故につながる。このときは、BOPの弁を閉めなくてはならない。
2010年にメキシコ湾で起きた原油の流出事故で、被害が拡大したのには、このBOPの不具合にも一因があるそうだ。
緊急離脱
いざというときに閉じるBOPの5重もある弁は、地下から噴出しようとするガスを1000気圧まで防げるようにできている。
そのBOPを「世界一のコネクタですよ」と話す猿橋さんには、こんな経験がある。
2012月11月、和歌山県新宮沖の南海トラフで調査をしていたときだ。上空を、寒冷前線が通過した。あっという間に風向きが変わり、船体がコントロールできなくなった。
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