File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男
第2回 「ちきゅう」、南海トラフで黒潮と闘う
次々と仕事が湧いてくるため、休んでいる暇がない。
航海は数カ月にわたることもあるので、ちきゅうにはもう一人、船上代表がいる。猿橋具和さん。澤田さん同様、首回りがたくましく、やっぱり赤い作業服がとても似合う。採用基準はそこなんじゃないかと思えるほどだ。
澤田さんは、JAMSTECに転じてちきゅうに乗る前は、20年以上、中東などで油田掘削を行う石油会社に勤めていて、海洋油田の掘削船に乗っていた。関わっていた油田の開発が一区切り着いたところで、誘われて、2005年にJAMSTECへやってきたのだ。
猿橋さんも同じ会社の出身。澤田さんの後輩に当たる。
今、ふたりは数週間ごとに交代しながら、いったん操業が始まったら24時間ノンストップのちきゅうを切り盛りしている。
石油掘削では絶対やらないフィールド
「苦労するのは、海流ですね」
澤田さんがそう言うと、猿橋さんも隣で大きく頷く。ちきゅう自身は時化には強い。どんな天候下でも、「船に弱い人なら揺れに気づけるかも」というくらいしか揺れない、頼れる存在だ。
問題は、海底を掘っている間ずっとぶら下げているパイプである。しかもそのパイプは、ただぶら下がっているのではなく、地球に接続されている。風や海流でちきゅうが流されてしまったら、パイプはちぎれてしまうかもしれない。
「特に、南海トラフのあたりを流れる黒潮がやっかいです。最初見たときはビビりましたよ」
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