第12回 辛すぎるほどご飯がすすむ!ブータン料理

ブータンの小さな町・デキリン出身のレキ・チョデンさん。来日当初は日本食が物足りなかったそうだが今は蕎麦やラーメンが好きだという。ただ、ワサビのツーンとした辛さは苦手

 「私は学校が遠かったので8歳のときから寮で生活していました。ブータンの子どもは寮に入る子が多くて、実家に帰るのは夏と冬の休みだけ。寮の食事はあまり美味しくないので、母の料理が恋しくてたまらなかった。それを知っている母は、私が休みになって家に帰ると『好きなものをたくさん食べなさい』と言って、必ずエマ・ダツィを作ってくれたものです」

 「だから、休みに入ると太っちゃうんです」と、小さい頃の思い出を語ってくれたレキさん。「両親は農業を営んでいたから、母が台所に立つと私は畑から唐辛子を採ってきて料理を手伝いました。姉や祖母、ときには父も一緒になってみんなで食事を作る。でもそれは話がしたいからなんです。学校や友だちのことをワイワイ話したくて、みんな台所に入っちゃう」

 レキさんの家では牛も飼っていて、父親が搾った牛乳でチーズを作るのも子どもの役割だったという。ブータンの子どもたちは手伝いをしながら、親との限られた時間を大事に過ごしているのだろう。「日本でも料理はするけれど、やっぱり実家のフレッシュな唐辛子とチーズで作ったエマ・ダツィにかなうものはありません」とレキさん。

 しかし、なぜ中南米原産の唐辛子がここまでブータン人の生活に入り込んでいるのか。レキさんは「辛いのはもちろんだけど、ブータン人は唐辛子そのものが好き」だと言った。唐辛子は15世紀末にコロンブスが香辛料として新大陸からヨーロッパに持ち帰り、商人によってアジアやアフリカを中心に広まっていったものだ。