第12回 辛すぎるほどご飯がすすむ!ブータン料理

 私は辛いものが嫌いではないが、強いわけでもない。山盛り唐辛子を前に怯む心を抑えてエイヤッと一口……辛い。だが、チーズのまろやかさが包み込むのか、舌にピリッと刺激が走る程度で「食べられない!」ということはなく、もっと辛い料理がタイや中国辺りにありそうだ。それどころか、噛むほどに唐辛子が本来持つ甘みや苦み、青臭さが味わい深く口に広がっていく。唐辛子が野菜だというのはこういうことか。

 「唐辛子って甘いんですね」と言いながらもうひとつ唐辛子を口に入れると、苦みとともに強い辛さが襲ってきた。真っ赤になって水を飲む私を笑いながらレキさんは言う。「唐辛子によって味はそれぞれ。甘みが強いものもあれば、とても辛いものもあります。どの野菜もそうでしょう」。

 レキさんからするとこのエマ・ダツィ「ぜんぜん辛くない」らしい。汗ひとつかかず、何とも涼しい顔だ。ちなみにブータンでは唐辛子の種類や量で辛さを調整するそうで、国内でいろいろな種類の唐辛子を栽培しているほか、他国から輸入もしている。「インドの小さな唐辛子はすごく辛い。ブータンの唐辛子のほうが味が豊かです」とレキさん。

 同じエマ・ダツィでも、寒い日は身体を温めるために辛い種類を使ったり、2種類入れて味の違いを楽しんだりと、そのときの気分や状況で変えるのだという。また、酪農が盛んなブータンではチーズもよく食べられていて、この2つで作るエマ・ダツィにジャガイモが入ると「ケワ・ダツィ」、干した牛肉を入れれば「シャカム・ダツィ」と呼ぶ。ブータンは煮込み料理が多く、そのおかず1~2品で米をたくさん食べる。唐辛子とチーズという二大食材が使われたエマ・ダツィはもっとも基本的な料理であり、ご馳走なのである。

ジャガイモが入ったケワ・ダツィ。ジャガイモの甘みが出るので辛さもそれほど強くはない。ブータンでは生後6カ月くらいからスープに唐辛子を入れて辛さに慣れさせ、6~7歳まではケワ・ダツィを食べる