第65話 早くかぶりつきたい……その美脚!

 肉は、室内保存でも、石のようにカチンカチンに凍っていた。

 表面は乾燥にやられて古いゴムチューブのようになっていたが、中は、紛れもなく血が通っていた赤い肉である。

 あああ、はやく、肉にかぶりつきたい。

 再び、そんな衝動に駆られた。

 考えてみると、脚やモモにかぶりつくなんてことは、フライドチキンぐらいしか経験がない。

 もちろん私は女性であるから、大人の映画のように、ぴちぴち女性の美脚にかぶりつくことはないし、ヨーロッパを旅行中に、大きな1本の豚モモに出会ったことがあるが、薄く削がれた生ハムとして出てきて、舌の上であっと言う間に溶けてしまったのだった。

 牛や鹿の自家解体に携わったこともあるが、大抵は、その年の大切な保存食となるために、細かく切って冷凍されるから、「さあ今日は、脚1本丸焼きにしよう」などという散財的なことは一切ない。

 これほどまでに私が “かぶりつき”に執着するのは、きっと日本人の肉の食べ方が、牛も豚も、スライス、細切れ、すき焼き、しゃぶしゃぶと、薄過ぎるからだろう。

 日本は、箸でつまめるサイズが基本となって、なんでも小さく料理をする。

 それはそれで素晴らしい日本の文化でもあるが、時には、もっとガツガツ食べたいという要求に駆られることもあるはずだ。

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