翌朝。
誰の行いがいいのか快晴だった。港近くのホテルを出る前に、フロントの人に「ずいぶん大きな船が来てますね」と水を向けると「ええ、お陰さまでお客さまも多いです」と弾んだ声が帰ってきた。
昨夜と同じ場所には、明るい陽光の下、ちきゅうがいた。
接岸している間近から見上げると、これが浮くなんてどうかしているとか、脇を行く漁船がどうも小さすぎるんじゃないかとか、バレンティンってすごいパワーだなとか、さまざまなことは頭に浮かんでくるのに、大きさをイメージできる適切な表現だけが思いつかない。
早速、世界一の科学掘削能力を持つちきゅうの、全貌を見せていただきましょう。
エレベーター付き9階建て
タラップを上がり、さらにエレベーターに乗る。エレベーターがあるのです。
ちきゅうは、やぐらより船首寄りに、甲板から上に7階、下に2階、計9階建ての大きな建物がある。ここにはブリッジや乗組員の部屋などがある居住エリアと、研究をするための研究エリアがある。
その最上階、7階部分に到着。
まずは掘るための施設を見せてもらうため、一同、真っ赤な作業服と安全靴、ヘルメットにゴーグルを身につける。とたんに気分が高揚し、互いの写真を撮り合う取材陣。ちょっとコスプレにはまる人の気持ちがわかる。
なぜコスプレをするかと言えば、掘削のための作業エリアに足を踏み入れるには、この出で立ちでないと許されないからだ。逆に、居住エリアをこの格好で闊歩することは許されない。規律が厳しいのだ。