「ちきゅう」という壮大な名をもつ船がある。海底を掘り進んで地球の未知に挑む、JAMSTECの誇る地球深部探査船だ。今回、我々はこの巨大船にお邪魔し、国の期待(つまり予算)と研究者の熱い要望を背負って船をとりしきる3人の猛者に話をうかがいました!(写真=田中良知)
その日の午後、ナショジオ編集部Y尾とライターK瀬は、東名高速を西へと法定速度で飛ばしていた。
「高速からも見えるらしいよ」
「でも、初めて見るものを、『アレだ!』って、わかりますかね」
「わからないかもね」
我々取材班は、JAMSTECの誇る地球深部探査船『ちきゅう』に向かっている。
ちきゅうとは、深い海の底のさらに奥を掘り進み、さまざまな研究に必要な“コア”と呼ばれる柱状の地層サンプルを採取したり、海底下を観測したりすることをミッションとした船だ。
2005年から2年間の試験航海を経て、現在は研究航海にひっぱりだこ。この秋も南海トラフへ研究航海に出かけている。
取材陣はこれまで、JAMSTEC横須賀本部を訪れるたび、岸壁に大きな船が停泊しているのを見ていた。だから、船はすっかり見慣れたつもりでいる。
しかし、事前調査によるとちきゅうは「横須賀本部に接岸できないほど、とにかく大きい」らしい。
この日、ちきゅうは清水港に停泊している。
カメラマンT中はというと、すでに静岡入りを果たしていて、大きな被写体を格好良く撮るため、清水港から離れた場所へも足を延ばし、ベストポイントを探している。
「大きいんですよね」
「大きい」
「どれくらいですか」