File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男

第1回 「ちきゅう」は海底掘削工場だった!

掘削フロアから船の後方を見渡す。ほとんどがパイプだ(写真クリックで拡大)

 この掘り方が、ライザー掘削法と呼ばれる。ライザーパイプを用いず、ドリルパイプをむき出しのまま掘り進める方法もあって、こちらはライザーレス掘削法と呼ばれる。
 ライザー掘削法は、海底油田掘削の主流の手法だ。ただし、科学的な目的では、このちきゅうだけが採用している。深いところまで掘れる分、操作に技術がいるからだ。

 というわけで、ちきゅうにはパイプが積まれている。積まれまくっているといってもいい。実際に、見渡す限りパイプだらけだ。

 ドリルパイプは1本9.5メートルで重さ350キロ、ライザーパイプは27メートルで27トン(2万7000キロ!)もある。2000メートルの海底まで繋げたら、その空中重量は約2000トンにもなる。そのため、パイプの周りに水深に応じた浮力体を装着して海に沈める。
 本日は、ドリルパイプはおよそ1000本、ライザーパイプはおよそ90本が積まれている。

 話をやぐらの麓に戻そう。パイプを海へ下ろすマンホールのそばに、ガラス張りのちょっとした部屋がある。
 ドリラーズハウス。掘削機械のコントロールルームだ。

 その中へ入ると、やぐらの真下をのぞむ特等席に、座り心地の良さそうないすが2脚並んでいる。左が、パイプを操って海底下を掘削するメインドリラーの席、右がパイプを運搬するアシスタントドリラーの席。どちらも肘掛け部分に腕を乗せるとちょうど両手が届くあたりに、操作用のボタンやジョイスティックが並んでいる。

 一度掘り始めたら、延々とその作業は続く。海底を掘る速度は、その時の地層の固さにもよるが、速くて1時間で15メートルほど、遅くて1時間で3メートルほど。分速5センチメートルで掘削は進んでいく。
 この作業中、ドリラーズハウスが無人になることがない。スタッフは交代で掘り続ける。

 掘っていく上での苦労はどこにあるのか。この辺りは次回です。

ドリラーズルーム。航海前は笑顔(写真クリックで拡大)


この記事は日経ビジネスオンラインとの共同企画です。
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片瀬京子(かたせ きょうこ)

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、09年よりフリー。共著書に『誰もやめない会社』(日経BP社)『ラジオ福島の300日』(毎日新聞社)など。