第5回 日本の宇宙エレベーターが世界デビュー!

 ケーブルに沿って昇って降りてくるというだけでなにか感動がある。この水準でも、簡単なことではないと分かるし、ましてや厚さが1ミリそこそこしかないカーボンナノチューブのケーブルを昇降するとなると、今とはまったく違う発想も必要とされるだろう。それでも、この競技会が技術的にも、社会的なプレゼンテーションとしても無意味なわけがないのだ。

 石川さんも、この競技会に今年、はじめて足を運んだそうだ。

「これまで映像では見ていましたが、やっぱり実際に見ると見ないとは大違いですごいなと思いましたよ。学生さんとかが手弁当で17チームほど集まってやってるんですよね。海外ですと金がないと、なかなか続かないんですけどね。本当に熱意がありますね。これは、日本では宇宙エレベーターが、ほかの国よりも、認知されていることも大きいと思いますよ。宇宙エレベーターに関係する国際会議でも日本の研究者が熱心に出ている割合が多い。やはりアニメ、ガンダムなどで繰り返し出てきたからでしょうか」

 などという話を聞くと、石川さんたちが世界にさきがけて構想を発表した背景も分かるような気がする。「一生を宇宙エレベーターに捧げる」是非はともかく、いずれ、日本でいち早くこの技術が成熟度をあげ、実現への一歩を踏み出す日がやってくると信じたい。

「季刊大林」タワー特集号。(写真クリックで拡大)

おわり

石川洋二(いしかわ ようじ)

1955年、静岡県生まれ。株式会社大林組 エンジニアリング本部 環境技術第二部 上級主席技師。工学博士。1978年、東京大学工学部航空学科卒業。1983年、東京大学工学系大学院航空学専修博士課程を修了後、東京大学宇宙航空研究所、レンスラー工科大学、NASAエイムズ研究センターを経て、1989年、株式会社大林組に入社。月惑星居住計画、地球環境工学などに携り、2013年より現職。宇宙エレベーター建設計画プロジェクトのリーダーを務めている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、中学生になったリョウが世界を飛び回りつつ成長する姿を描いた切なくもきらめく青春物語『リョウ&ナオ』(光村図書出版)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider