第5回 日本の宇宙エレベーターが世界デビュー!

「今、メーカーにヒアリングしてみても、そもそも現時点で作ることが出来るものの強度は、せいぜい数ギガパスカル(パスカルは単位面積あたりにかかる力の単位)で、宇宙エレベーターに最低必要と考える150ギガパスカルに遠く及びません。安全を見るともっとほしいんですが、カーボンナノチューブの場合は、まだそういうニーズがないんですね。我々は、長くして強くしてほしいって言ってるんですけど、ほかにそういうニーズがないから、研究が進まないんですよ」

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 カーボンナノチューブの応用は、非常に範囲が広く、ひたすら強度を上げたり、長くしたりするのとは違う方面にリソースを取られがちなようだ。地上で使う構造材料としてなら、ほかの炭素繊維でも充分な強度が実現できるし、また、カーボンナノチューブの場合、半導体としての活用や、燃料電池、光学機器への応用も考えられている。宇宙エレベーターからの「長く強く」という注文には応えられずにいるらしい。

 これは意外というか残念な現状だ。

 カーボンナノチューブという夢の素材が、原理的には「余裕で可能」なのに、いまだ必要な強度の数10分の1しか出せていないこと。長さ的にも、せいぜいセンチメートル単位でしかつなげられないこと、などを知ると、たしかに、安易に「宇宙エレベーターを作ろう」などとは言えなくなってしまう。充分な強度を持った10万キロメートル近いカーボンナノチューブのケーブルというのは、どこかのメーカーが本気で取り組めば実現するのかもしれないが、ブレイクスルーのまさに「糸口」が見えていないのが現状なのかもしれない。

 実は、ぼくは、宇宙エレベーターが抱える問題点として、たとえば、スペースデブリの問題を、石川さんが指摘するのではないかと想像していた。今、地球の周回軌道上には、使用期限の切れた人工衛星や、もっと小さな人工衛星やロケット由来のゴミ(デブリ)などがたくさん漂っている。特に低軌道の人工衛星などは数が多く、なおかつ、それぞれの元来の目的や来歴に応じて、様々な向き、様々な相対速度で飛びかっているので、ひとつでも宇宙エレベーターのケーブルにぶつかったりすると、破断してしまう可能性がある。対策はいろいろ議論されているものの、誰もが納得するような解決策は見いだされていない。しかし、ケーブル自体の目処が立たない以上、デブリの議論をどれだけ深めても「机上の(軌道上の?)空論」になってしまうかもしれない。

 にもかかわらず、宇宙エレベーターはいずれ実現する。