第5回 日本の宇宙エレベーターが世界デビュー!

 さて、このように書いてくるときわめて順調に思えるのだが、石川さん自身がイケイケ! ではなくて、「宇宙エレベーターをやりたい!」という学生さんや新入社員に少し熱を冷ますような発言をしなければならないという背景はどういうことなのだろう。

「──一般的な熱狂とか気運もうれしいのですが、地道なところで学術的なところも固めていかなくてはならないんです。そこが少しずつ動き始めているのが現状です。最近では、日本航空宇宙学会が、軌道(宇宙)エレベーター検討委員会を作って、今年の4月から始まっています。この学会が中心となっている宇宙科学技術連合講演会というところには、今年特別セッションを企画しています。それに、さっき述べた国際宇宙会議IACでも、数年前から宇宙エレベーターのセッションがあって、毎年やってます。そういう意味では学術分野では、まあ真面目に検討を始めてみようかという盛り上がりを見せ始めています」

「──でも、宇宙エレベーターを実現させるのに100の技術力が必要だとしたら、私の見るところ、まだ1にも技術力がいってない。だから事業化をする前に、まず本格的な研究を始めるか決断する段階にある。あるいは、決断しなくても興味がある仲間を増やしていく段階にあるわけです。それがやっと動き始めている時期なんです」

 つまり、今、宇宙エレベーターを造ろうにも、ようやく現実的な検討を始めた、という進捗状況で、これから先、どうなるか分からない、というのがポイント。たしかに、学生さんに安易にお奨めするのは憚られる(ただ、それでもいいという人は、やはりぜひ頑張っていただきたいものだが)。

 なぜ、技術成熟度がそれだけ低いかというと……象徴的なのはケーブルの素材として期待されるカーボンナノチューブだ。原理的には、充分に宇宙エレベーターの素材となれるのだが、まだ10万キロメートルにわたって1本のケーブルを作る技術はない。それどころか、必要な強度を持ったものも出来ていない。