第4回 宇宙生物学の研究者がなぜ建設会社に入ったのか

 この話を伺った時、正直、面食らった。

 建設会社に宇宙工学の博士。そして、その博士は、宇宙における有機物、いわば生命の起源の専門家である点。なにかこんがらがっている。

「でも、当時、そういう研究をしてても就職先なんてないわけです(笑)。それで大学を出てから、アメリカにポスドク(博士研究員)として5年間いたんですね。まずニューヨーク州のレンスラー工科大学っていうところで、化学科。そのときは木星の大気でやっぱりシアン化水素がどういうふうにできるかという実験をやってました」

 ここでもシアン化水素、というのは、太陽系の惑星、宇宙の様々な星雲などで、スペクトル分析をすると、あちこちにシアン化水素があることがわかっていたからだ。宇宙に普遍的な物質であり、有機物の元になるものとして注目されていた。さらにその後、石川さんは、NASAのエイムズ研究センターに移り、木星の衛星タイタンの環境でどんな有機物ができるか、という研究に携わる。

 エイムズ研究センターは、今非常に存在感を増している宇宙生物学の中心地のひとつだ。本連載でインタビューした中では、「クマムシ博士」堀川大樹さんが、以前、在籍していた。今では、極限の環境で生きのびることができるクマムシも宇宙生物学の興味の対象なのである。ただし、石川さんがその場にいたのは1980年代後半で、ちょっと早すぎる探究だったのかもしれない。

「宇宙生物学というのも学問としてまだまだ成り立たない分野ではあるし、アメリカでもそんなに就職先があるわけでもないし。ちょうどその頃、日本がバブル期で、建設会社が月や火星に家をつくろうというくらい勢いがあって、そういう宇宙に関する部署もできてたんですよね。今回、宇宙エレベーターの構想を練ったプロジェクトが『部活動』だとしたら、もっときちんとした組織になっていて。ちょうどそんな時期に、宇宙研時代の指導教官から連絡があって、そこに入らないかと言われたんです。同じ研究室の先輩もいたんですよ。実は、建設会社に宇宙工学者が入るのは昔はよくあったことなんです。構造の研究、あと風の影響などを見る。航空宇宙の勉強をすると、風洞実験などもしますから、そういう方面で」