ツィオルコフスキーは、ロケットの父とも呼ばれ、宇宙ロケットの原理を考案した人物である。実はそれよりも前に宇宙エレベーターのアイデアを考えていたというのだから驚かされる。しかし、ロケットのない世界で、まっさらな頭で考えれば、宇宙にモノを飛ばすより、高い塔を建設するとか、空に梯子をかけるといった発想の方が自然だったのかもしれないとも思う。

 さて、夢物語だった宇宙エレベーターがにわかに現実味を帯びてきたのが、1991年のことだ。

「NEC筑波研究所にいた飯島澄男さんがカーボンナノチューブを発見したのがきっかけですね。炭素の結晶が管の形につながったもので、今の一番強い鋼鉄の100倍ぐらいの強度が期待できます。これはものすごく広い分野に衝撃を与えた発見なんですが、当時、宇宙エレベーターに興味をもっていた研究者も飛びつきました。これなら理論上は、数万キロの長さのケーブルが自重で切れてしまわずにすむと」

 ここで言われる強度というのは、自身の重さに比べてどれだけの引っ張り力に耐えられるか、というふうに考えてもらうといい。通常の建築物だと、重みに押し潰される力に耐える必要があるのだが、宇宙エレベーターの場合は逆で、遠心力によって引っ張られるのに耐えなければならない。

「我々の最終的な目標は、ペイロード(荷物)70トンを積んだ総重量100トンのクライマー、つまり100トンの乗り物が昇っていけるケーブルをつくりたいんです。それで計算すると、長さが10万キロで、重さが7000トンのカーボンナノチューブのケーブルをつくらなきゃいけない。これ驚かれますが、厚さが1.38ミリメートル、幅も最大の部分で4.8センチメートルしかありません」

 非常に薄いリボンのようなものが、10万キロにもわたって地上から伸びる。いったいどうやってそんなものを作るのか。

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